湘南移住を検討するとき、ほぼ必ず出てくる問いがあります。「通勤が遠くなるけど、本当に続けられるか」。
結論から言えば、出社が週3日以下なら、多くの人にとって現実的です。品川まで約40〜50分、定期代は月2万円前後。仕事はそのままに、住む場所だけを変える選択になります。
この記事では、通勤時間・混雑・コスト・在宅日数の4つを順に整理します。
ここで言う「湘南エリア」は、藤沢・辻堂・茅ヶ崎・鎌倉・平塚・逗子を指します。同じ「湘南」という言葉で括られますが、東京への通勤条件は駅によってかなり異なります。
湘南主要駅から品川・東京まで、実際の所要時間を並べる
以下はJR東海道線・横須賀線を利用した場合の所要時間の目安と、6ヶ月定期の月割り定期代です(※1)。
| 駅 | 路線 | →品川(所要時間) | →東京(所要時間) | 定期代(月換算・6ヶ月) |
|---|---|---|---|---|
| 藤沢 | JR東海道線 | 約40分 | 約50分 | 約20,000円 |
| 辻堂 | JR東海道線 | 約45分 | 約55分 | 約22,000円 |
| 茅ヶ崎 | JR東海道線 | 約45分 | 約55分 | 約24,000円 |
| 平塚 | JR東海道線 | 約50分 | 約60分 | 約25,000円 |
| 逗子 | JR横須賀線 | 約50分(乗換1回) | 約60分 | 約22,000円 |
| 鎌倉 | JR横須賀線 | 約50分 | 約55分 | 約20,000円 |
※所要時間は平日・通常ダイヤの目安。乗り換えや待ち時間により前後します。
東海道線沿いの藤沢〜平塚と、横須賀線沿いの逗子・鎌倉で利用路線が異なります。いずれも品川まで約40〜50分・東京まで約50〜60分の範囲です。新宿・渋谷方面へも、乗り換えを含めておおむね1時間前後で出られます。
鎌倉は所要時間こそ藤沢より10分ほど長めですが、品川までの定期代は藤沢と同水準(約20,000円)です。
グリーン車について
どうしても座って通勤したい場合、東海道線にはグリーン車があります。Suica利用時の料金は50km以内の区間で750円(2024年3月改定後・IC料金)。藤沢・辻堂・茅ヶ崎から品川はいずれも50km以内に収まります。ただし、グリーン車でも必ず座れるとは限らず、混雑時には立つことになるケースもあります。週3日・片道のみグリーン車を利用した場合、月換算で約9,000円のコスト増になります。
また、JR東日本のオフピーク定期券を利用すると、通常定期より月4,000〜5,000円程度安くなります(※8)。混雑を避けつつコストを抑えたい場合の選択肢として存在します。
通勤の負担は、混雑よりも「家から会社までの総時間」で決まる

東海道線の混雑率は154%です(国交省調べ ※3。最混雑区間:川崎→品川)。中央線快速の161%(中野→新宿)や埼京線の163%(板橋→池袋)ほどではありませんが、東京圏全体の平均139%は上回ります。飛び抜けて混むわけではない、ただ空いてもいない——そのくらいの水準だと考えておくとよさそうです。
数字の上では、東海道線の混雑は中央線・埼京線と大きく変わりません。むしろ通勤の疲れは、混雑の度合いよりも、駅から自宅や会社までの距離や、往復にかかる時間の合計から生まれます。
見落としがちなのが、電車に乗っている時間以外の移動です。藤沢・辻堂エリアから都内へ25年通勤してきた移住者の記録では、自宅から会社まで片道70分です。内訳は自宅→駅15分・電車45分・駅→会社10分(※4)。「電車で45分」だけで見積もると、前後の移動で実際はもっとかかります。住まいを選ぶときは、駅までの距離も含めて考えておくのが現実的です。
週何日出社するか——通勤日数が住まい選びの前提を変える

通勤負担をどう見るかは、週に何日出社するかによって大きく変わります。
首都圏の雇用型就業者のテレワーク実施率は約40%、テレワーカーの週平均実施日数は2.1日です(国交省調べ ※5)。週5日勤務に照らすと、週3日出社・2日在宅がひとつの標準像として浮かびます。
毎日通勤することを前提にした住まい選びが、すでに多くの人にとって現実に合っていないことを、この数字は示しています。週3日の出社なら、月間の通勤回数は週5日フル出社の場合と比べて4割程度減る計算になります。
一方で、出社に後ろ向きな理由の第1位は「通勤に時間がかかる」で、74.8%に上ります(Job総研調べ ※6)。テレワークに慣れた後に出社頻度が増えた場合、負担感が跳ね上がりやすいことは複数の調査が示しています。「低頻度だが長距離通勤」という構造が通勤ストレスを底上げする点には注意が必要です(※7)。
湘南からの通勤を設計するうえで確認しておきたいのは、「今の出社頻度が今後も続くか」という点です。週3日在宅が保証されているのか、会社の方針次第で変わりうるのかによって、通勤距離のリスク評価は変わります。
在宅の日の過ごし方が変わる

週2〜3日の在宅勤務がある人にとって、湘南は「出社日を耐える場所」より「在宅日を活かす場所」として向いています。
通勤のない日は、往復の移動時間がそのまま手元に残ります。海まで徒歩・自転車で20〜30分なら、散歩や気分転換のついでに立ち寄れる距離です。観光で行く海ではなく、日常の延長で使える海がある。この差は、住んでみると毎日のように効いてきます。
在宅の日が増えることで、街の個店や商店街との接点も変わります。辻堂移住者の記録では、移住後1ヶ月間、パートナーは一度も電車に乗らず辻堂内だけで生活が完結したとしています(※2)。通勤する本人よりも、在宅・地元中心の生活を送るパートナーにとって、街の生活圏の質が直接的な満足度に結びつきやすい面があります。
通勤する人としない人で、選ぶ街は変わる

夫婦・カップルで一方が都内通勤、もう一方が在宅中心という構成では、街選びの優先軸が二人でずれやすくなります。通勤する側は駅近・路線の利便性、在宅側はスーパーや個店の徒歩圏・海や公園への出やすさ——それぞれが日常の満足度を左右するからです。
- 藤沢: 駅前完結度が高く、通勤する側には安心感があります。在宅側にとっても買い物動線は強い。
- 辻堂: テラスモール湘南を中心に在宅側の生活動線も整いやすく、二軸のバランスが取りやすい傾向があります。
- 茅ヶ崎: 在宅・地元生活を重視する側に強みがありますが、通勤する側の所要時間も含めて許容できるかを事前に確認しておく必要があります。
- 平塚: 東海道線で都内方面・小田原方面の双方向に対応しやすく、夫婦それぞれが異なる方向に通勤する場合に路線の柔軟性があります。
- 鎌倉: 観光地のイメージが強い一方、住環境は落ち着いており在宅側の満足度が高い傾向があります。通勤する側は横須賀線直通で品川まで約50分という条件を許容できるかが判断基準になります。
駅ごとの違い:始発・路線・グリーン車で選ぶ
通勤条件を軸に各駅を比較すると、東京・品川方面への所要時間に大きな差はありませんが、生活設計に影響する細かな違いがあります。
- 始発駅の有無: 辻堂・茅ヶ崎・平塚は東海道線上り方面への始発設定があります。逗子は横須賀線の始発駅です。着席しやすいかどうかは、長距離通勤の継続可能性に地味に効いてきます。
- 通勤頻度と駅距離のバランス: 週5日フル出社が前提なら、品川まで約40分・駅前完結度の高い藤沢が候補として浮上しやすい。週3日以下の出社なら、茅ヶ崎・逗子・鎌倉など海との距離感や街の個性を優先しやすくなります。
- 路線の違いを意識する: 東海道線(藤沢・辻堂・茅ヶ崎・平塚)と横須賀線(逗子・鎌倉)では、品川以遠の都内ターミナルへのアクセスルートが異なります。勤務地が新宿・渋谷方面か、東京・横浜方面かによって使い勝手が変わるため、実際の通勤経路で確認しておくことを推奨します。
- グリーン車を使うなら会社負担の確認: 着席のためにグリーン車を使うなら(前述のとおり週3日で月約9,000円)、通勤費として会社が負担するかを事前に確認しておくと判断しやすくなります。
通勤費の会社支給範囲・グリーン車の補助有無は勤務先によって異なります。移住前に就業規則や人事に確認しておくことを推奨します。
おわりに
「通勤が遠くなる」という事実は変わりません。ただ、働く日数と在宅日のバランスが変化したいま、通勤距離の重さは一律ではなくなっています。週3日出社・2日在宅が標準に近づきつつある現在、湘南からの通勤を現実的な選択肢として検討できる人の層は広がっています。
判断を具体化する最初のステップは、候補の駅から出社時間帯に実際に乗ってみることです。家から会社までの時間と混雑を体感し、そのうえで物件探しの範囲を絞っていく——この順序が、後悔の少ない移住につながります。藤沢・辻堂・茅ヶ崎・平塚・逗子・鎌倉、いずれのエリアでも、通勤条件と暮らしの両面を比較しながら物件を探せます。
この記事の情報源
- ※1 駅探「乗り換え案内・時刻表」
- ※2 イーアイデム ジモコロ「湘南の『辻堂』に移住したら、便利さと自然のバランス抜群で夫婦がもっと仲良くなった」(2023年1月12日)
- ※3 国土交通省「三大都市圏の平均混雑率が増加 ~都市鉄道の混雑率調査結果を公表(令和6年度実績)~」
- ※4 shonan-sampo.net「湘南の藤沢・辻堂から都内に25年も通勤する移住者が紹介!必ず座る方法」(2022年)
- ※5 国土交通省「令和6年度 テレワーク人口実態調査」(2025年3月)
- ※6 Job総研「2025年 出社に関する実態調査」(2025年1月27日)
- ※7 ザイマックス不動産総合研究所「コロナ禍で変化した『通勤』を読み解く」(2024年3月21日)
- ※8 JR東日本「オフピーク定期券発売中!」


