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【湘南diary 006】便利さと心地よさの真ん中で。辻堂で育む家族の時間。|Hさんご夫妻

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夫婦の“街探し”で、辻堂にたどり着いた。

「駅を降りたら、静かであってほしいーー。」

それは、暮らす街を選ぶうえで、真悟さんとゆかこさん夫妻に共通する願いだった。

JR辻堂駅南口から徒歩15分ほど。
海へと伸びるバス通りから少し入った場所に、夫妻が暮らす注文住宅の一軒家がある。

結婚当初は、真悟さんの会社の社宅がある小田原に暮らしていた。
しかし、もともと広告会社に勤め、都内で働いていたゆかこさんにとって、交通や距離的に不便を感じることもあり、もう少し東京寄りの場所へ引っ越すことに。

そこで、二宮から戸塚までのJR沿線の駅を一駅ずつ降りて、実際に街を歩き、自分たちの肌感覚に合う場所を探すことにした。そのなかで、ふたりが揃って「ここだ」と感じたのが辻堂だった。

「空がひらけていて、雰囲気が気に入ったんです。テラスモール湘南は当時もありましたが、茅ヶ崎や藤沢に比べると、駅前の商業施設感があまりない。とくに南側の雰囲気が良かったです」とゆかこさん。

辻堂での最初の思い出を尋ねると、真悟さんはこんなエピソードを教えてくれた。

「初日に、不動産屋さんに教えてもらった駅前のスペインバル『パンチョ』に行ったんです。『今日引っ越してきました』と言ったら、店員さんもお客さんも『辻堂へようこそ』という感じで、とても歓迎してくれてうれしかったですね」

駅の近くに戸建ての賃貸を見つけ、期待をふくらませながら暮らしはじめたが、ほどなくして真悟さんのアメリカ赴任が決まり、辻堂に半年ほど住んだ後、夫妻はアメリカのカリフォルニア州へ渡った。

その“たった半年”の印象が良かったのだろう。
2年の赴任を終えて帰国すると、ふたりは迷わず、ふたたび辻堂に暮らすことにしたのだ。

やがて暮らしに慣れた頃に子どもが生まれ、しばらくはマンションで暮らしていたが手狭になり、ふたたび家を探すことに。運良く辻堂の南側の土地に出会い、地元の工務店とともに注文住宅を建てることにした。

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2020年の秋に着工し、2021年5月に完成した家は、木の温もりにあふれる心地いい住まいだ。リビングダイニングを暮らしの中心に、あえて大人と子どもの空間を隔てないつくりになっている。

暮らすほどに感じる、街の温度

「辻堂はフレンドリーな人が多いですね。お店の人もご近所さんも。向かいのおばあちゃんたちが、息子を孫のように可愛がってくれたりします」とゆかこさん。

真悟さんは、街の個人店の魅力を語る。
「パン屋さんがいくつかあったり、コーヒーロースターの『27』というお店(鎌倉にも出店)もあります。鵠沼まで行くと、おいしい手づくりのアイス屋さんもありますし。小さな商店が楽しいです」

2000年代から再開発が進んだ辻堂は、整った駅前の区画と、昔ながらの街並みとが自然に調和している。

ふだんの家族の移動手段は、ほとんど自転車だ。辻堂は道が平らで、電動でなくても、快適に走れる。鵠沼海岸のミニシアターや、個人店が楽しい本鵠沼、江の島など、30分以内で行ける場所に魅力的なスポットがたくさんあるのだ。

自然に親しむライフスタイルへ

美術館や映画など、もともとアート巡りが好きだったというHさん夫妻。
アメリカ西海岸での2年間、そして辻堂での暮らしを通して、
自然への感覚や価値観は少しずつ変わっていった。

「小田原は山も見えて、箱根が近くて、海と山の両方があって良かったですね。
便利さで言えば、辻堂の方が上ですが、都心で働いていた頃は朝から深夜まで会社にいて、自然とはほど遠く…。小田原で朝焼けや夕焼けを見たときの感動は覚えています。」

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「アメリカに住んでいた頃、国立公園を巡った経験があって。イエローストーン、ヨセミテ、グランドキャニオンなどの壮大な自然の景色に感動してから、ネイチャー系を楽しむようになりました。辻堂は海が近いですし、丹沢方面へキャンプにも行きます」

数年前に、知人が運営する大磯農園の活動に家族で参加。畑の小さな区画を借りて、好きなものを育てる豊かさを知り、今も家の近所の市民農園を借りて、野菜づくりを楽しんでいるという。

「大磯農園は、農業経験がない人にも教えてもらえる仕組みで、横浜や都内から通うメンバーもいておもしろかったです」

辻堂に暮らして約9年。
子どもが生まれ、家を建てて、仕事も地域とのつながりが増えた。
現在は、真悟さんは横浜まで通勤し、ゆかこさんはフリーランスで在宅で働く。
今では見慣れた景色も、住み始めたころはすべてが新鮮だった。

「最初は、サーフボードを抱えて、上半身裸で自転車を走らせている人に驚きました。
あとは、週3、4日しか営業しないお店や、夏休みは丸々休むお店もある。
独自のライフスタイルを大切にする文化があると感じます」

初めからいろいろなことを計画的に決めて、進めていったわけではなく、
暮らすなかで、家族の形や働き方の変化もあり、自然と今のようなリズムになっていった。
この先もまた、海外転勤の可能性もゼロではないが、流れに身をゆだねながら、
辻堂のおだやかな暮らしを楽しむ今が、とてもしあわせそうだ。

「都心から、“ゆったりしたもの”を求めてくる人が多いと思います。
実際の生活は、子育ても仕事も忙しい毎日ではあるので、それほどゆったりしていないかも。それでも、暮らしの中でふと目に映る景色は、都会にいた頃とはまったく変わりました」

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編集後記:

取材の日、お昼すぎに小学校から帰ってきた夫妻の息子に「辻堂のどんなところが好き?」と聞いてみると、少しはにかみながら「自然が多いところ」と答えてくれた。
家のあちこちには、彼の創作物や絵が飾られていて、それらが心地よく家族の空間に調和していた。

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