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【湘南diary 004】湘南・鎌倉で、旅するように発酵と生きる。|「Kimy Kombucha」橋本貴美代さん

「Kimy Kombucha」橋本貴美代さん 特集

世界を旅してたどり着いた湘南の地

知り合いがいるけれど、田舎でサーフィンにどっぷり浸かるか。
知り合いはいないけれど、心惹かれる新しい場所へ行くかーー。

運命の二択を、10円玉を投げて決めたという橋本貴美代さん(以下、Kimyさん)。
朗らかな笑顔が印象的な、鎌倉・由比ガ浜通りにある発酵飲料の専門店「Kimy Kombucha」の店主だ。

湘南に移り住んだのは2010年頃。
福岡出身のKimyさんは、幼い頃から本やアートを通して海外に関心を持ち、20代ではオーストラリアでワーキングホリデーを経験。その後もツアーコンダクターとして世界中を飛び回る生活を送っていた。

当時の拠点は、成田空港へのアクセスが便利な千葉。
けれど、サーフィンが好きだったこともあり、「海の近くで暮らしたい」という思いが強くなっていった。千葉・一宮への移住も考えていたが、ドライブでたまたま通りかかった湘南の空気に、直感的に惹かれたという。

「知らない世界に飛び込むことに、あまり迷いがないタイプなんです」と笑うKimyさん。その言葉どおり、湘南移住の決断もとても自然体だった。

藤沢駅に初めて降り立ったその日、最初に立ち寄った不動産会社が「ユーミーらいふ」。ライフスタイルから提案する丁寧な接客に惹かれ、さらに福岡出身のスタッフが多かったことにも安心し、その日のうちに家を決めてしまったという。

15年以上の湘南暮らしが始まった。
最初に選んだのは、藤沢市の本鵠沼。東京に通勤していた当時は、「海に近い・駅に近い・二口のガスコンロ」という3つの条件で選んだそうだ。

「最初に本鵠沼に住んだのが大正解でした!
移住者も多くて、当時あった薬膳料理店『和(ニコ)』の店主・ゆみさんがとてもウェルカムで。いろんな人をつないでくれたんです。今の私があるのは、ゆみさんのおかげ。だから私も、人と人をつなげようと思うようになりました。本鵠沼の街のコンパクトさも心地よくて、サーフィン仲間も自然と増えていきました。」

コンブチャとの出会い

湘南での暮らしに慣れてきた頃、「海のそばでもっとゆっくり暮らしたい」と思い、アパレルに転職。自然由来のものに惹かれ、腸内マッサージやアロマを学ぶうちに体調が整いはじめた。そして、ひと月のリトリートボランティアで訪れたコスタリカで、人生を変えるコンブチャに出会う。

お店のコンブチャと共に「コンブチャとの出会い」を語る写真

※「コンブチャ」とは、紅茶や緑茶に砂糖を加え、「スコビー(scoby)」と呼ばれる酢酸菌と酵母からなる菌株を入れて発酵させたもの。

「オーガニックショップで何気なく飲んだコンブチャが衝撃的においしくて。
何これ!?って(笑)。調べたら、体にもすごく良い。海外ではすでに定着していたけれど、コスタリカで飲んだものが特別においしかったんです。」

帰国後は夢中で研究を重ね、ワークショップやYouTubeなどで独学を深め、ついにあの味にたどり着いた。

「うわっ、おいしい!できちゃった!って、感動しました。」

健康志向の高い湘南エリアで「コンブチャが根付くはず」と感じたKimyさんは、当時、働いていた鎌倉の会社の社内異動でカフェの店長を引き受ける事に。「コンブチャをやらせてくれるなら」と条件を申し出た。

それから地道に活動を続け、ワークショップでファンを広げ、今年の春には念願のクラフトコンブチャ専門店「Kimy Kombucha」をオープン。今では全国に約6,000人の生徒がいるという。

「飲み続けるうちに、心も体も整っていく。腸が整うと、自分に何が合うか・合わないかがクリアになります。食生活がジャンクな人ほど、コンブチャを飲んでみて欲しい。」

自然のそばで、シンプルに生きる湘南の人たち

「東京から移住してきた友人をたくさん見てきたけれど、みんなどんどん“抜けて”いくんですよね(笑)。ヒールや革靴を履かなくなって、スニーカーかビーサンの二択になったり。ファッションも意識も、少しずつ削ぎ落とされていく。」

Kimyさんはそう話しながら、湘南で暮らす人たちの穏やかさに触れる。

湘南で暮らす人たちの穏やかさを話す、店主Kimyさん

「山があって海がある環境でシンプルに暮らしていると、“なんでみんなこんなに優しいんだろう”って思うんです。心のまま思考で動くのではなく、自然に寄り添って生きているからかもしれません。」

休日はサーフィン、ピラティス、登山とアクティブに過ごす一方で、おいしいコンブチャを作り続けるために、東京のオーガニックショップやアートイベントへも足を運ぶ。年に2回は海外へ行き、2025年は南フランスやイタリア、スリランカを訪れたという。

「ずっと同じではいられない。新しい味をつくるには感覚を研ぎ澄ませることが大切。
おいしいものとアートは、自分をクリアにしてくれる。だから海外にも行くんです。」

そして、湘南の街についてはこう語る。

「鎌倉や湘南エリアには、何かに長けている、“オタク”な人が多いと思います。
出身地や年齢より、“今どんなことに夢中か”“どんなフェーズにいるのか”に興味を持つ人が多くて、そこが好きですね。」

評価よりも、自分の感覚を信じて

健やかなエネルギーに満ちたKimyさんと話していると、こちらまで気分が明るくなる。
おそらく多くのお客さんも、彼女とのおしゃべりを楽しみに店を訪れるのだろう。

最後に、湘南移住を考えている人へのメッセージを伺った。

「まずは、ふらっと来てみたら?
観光地や人気店じゃなくて、自分の足で歩いて、ピンときたお店に入って、そこの人と話をしてみて。湘南は街ごとに雰囲気が全然違うから。人の評価じゃなくて、自分の感覚で決めてほしいですね。」

「都会と田舎の距離感がちょうどいいのが湘南の魅力。自分を知りたい人、整えたい人にとって、人生で一度は選んでほしい場所です。」

「手作りだからね、やっぱり染みるんだよね〜。」
そう言いながらコンブチャの瓶を見つめるKimyさんの笑顔は、湘南の光のように輝いていた。

おすすめの一品「KOMBUCHA Flight」の写真

編集後記:おすすめの一品「KOMBUCHA Flight」

3種類のコンブチャをミニサイズのグラスで飲み比べができる。はじめてコンブチャを飲む方のテイスティングや、いろんな味を楽しみたい方におすすめ。左から、Kimyさんの代表作・無農薬紅茶、バタフライピー、レモンジンジャーのコンブチャ。味わいや余韻に個性があって、どれもおいしい。

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